舞台美術研究会に入ってから初めての現場で、それまで隈裏にはあまり立ち寄ったことがなくて、部室に入るのも初めてでした。
朝一番に部室に入ると、前日に作った棚や椅子が、冷たい空気の中で静まり返っています。
観音を開けてそれらを外に出すと、室内での作業が始まります。
木材を切って、釘とネジで組み合わせ、色を塗るという一続きの作業に没頭していると、飛ぶように時間が過ぎていきます。
午後になると、塀の向こうから太陽の光が差し込んで、塗ったばかりのパネルに降り注いでいました。
均一の色で塗られたパネルは、均等に陽光を反射して光輝きます。
作業を終え、木屑や落ち葉を片づけていると、だんだん陽が落ちてきて、立冬の頃には、観音を閉めて部室から出るときに、月夜の闇を蛍光灯が照らすようになります。
うちに帰ると相応に疲れていて、明日のアラームをかけるとすぐに深い眠りの底に落ちてしまいます。
そういう風に、十月と十一月の毎日を過ごしていました。
あの場所の、木と鉄とペンキの匂いが溶け合った秋の空気が、とても好きでした。
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