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『まちぼうけ』スタッフ

舞台美術 かきはな

(2018年度秋研『Franzk』、アトリエにて)



引退という言葉にイマイチ実感の追いつかないままこんな時期になりました。基本意地っ張りな私ですが最後なので精一杯の素直な気持ちを書いてみます。


今でこそ幹事長とかチーフなんてやっていますが、私は元々物理的にも内面的にも超絶不器用で負けず嫌いで泣き虫で、同期にも先輩にも本当にたくさんの迷惑と心配をかけてきました。

73期はお互い甘いと言われてた頃もあったけど、私からすると真逆でした。大好きな同期にかけられる「好き」って言葉はどんな厳しい言葉よりずっと重かったし、思えば3年間ずっと身の丈に合わない期待と責任の中にいた気がします。でも何度「私なんか」って思っても同期はいつも好きだと言ってくれて、その度に私は自分の中のハードルを上げました。そうするしか気持ちに応える方法がわからないくらい同期は優しく、私は色々なことが下手でした。

ぶたびの3年間はすごく楽しかったけどたまに、特にこの1年は色んなことが怖くて全部わけわかんなくなっちゃって、何も頑張れない時期がありました。頑張りたいのに頑張れず自己嫌悪しての悪循環で、秋研なんかできないと本気で思ってました。「期待」は怖くて重いくせにいつもそういう孤独から救ってくれるものです。ずるいなぁと今でも思います。73期はたぶんお互いすごく期待しちゃう学年で、でも心配性で相手を頑張らせることに臆病で、それでいて妥協もできない頑固さがありました。私は同期のそういう繊細で不器用なとこがすごく好きだったし、きっと誰よりも期待に弱く、同時に誰よりも頑固でずるかったと思います。



(2019年度春研『虹の架かる夜』小屋前)



私は春研での主宰経験や幹事長という役職が相まって恐らく同期で一番多くの人と出会いました。当然活動の迷いや不安、退会の相談を受けることもあって、私はその度に「一緒に秋研しようよ」「まずは私の現場でタタキしない?」などの言葉で引き留めてきました。強気なこの言葉がただの寂しさからだったこと、今の皆はもう気付いていると思います。そんな皆はいつの間にか期待の何倍もの自信をつけ、「自分なんか」なんて言わなくなってました。この秋研期間はその頼もしさと優しさに何度も支えられ引っ張られ、同時に私の3年間の「ずるさ」が許されたような気がしました。

私は最近少しずつ「頑張ろう」だけじゃなくて「寂しい」「助けて」が言えるようになりました。自信が無かったのも取り残されていたのもきっとずっと私の方で、3年間かけてやっと甘えられるようになったんだと思います。だから今終わるのは、本当はすごく不安で寂しいです。

大好きな同期へ。今日まで乗り越えてくれて本当にありがとう。たくさん頑張らせてしまってごめんなさい。でもやっぱり、ありがとう。頑張った私たちにごめんは似合わないから、いっぱいありがとうを書きます。

こんな私を最後まで信じてくれてありがとう。頑張れる私にしてくれてありがとう。一緒に頑張ってくれてありがとう。ぶたびを好きにさせてくれて、好きでいてくれてありがとう。最後までありがとうを言える距離にいてくれて、本当にありがとう。

そして私に美術の楽しさを思い出させてくれた75期。今回は美術補佐3人、在宅メインの舞台装飾4人という7人もの75期が美術に関わってくれました。補佐と長い時間を共にしたり装飾班の子たちの作品を楽しみに待ったりする中で次第に秋研をやっているという暖かい実感が湧いてきました。「ぶたびを存続させなきゃ」と責任感で雁字搦めだったのに、純粋に目の前の75期に美術を好きになってもらいたいと思ったら一気に肩の力が抜けました。演劇はいつも誰かを思ってやるものだったなぁと思い出しました。上手く言えないけど、小屋入り中に75期が集まって話しているのを見たとき私たちの秋研はきちんと秋研の役割を果たせたんだと思ったんですよね。それくらい、75期がくれた前向きな力は大きかった。本当にありがとう。

それからどんなときも憧れでいてくれた先輩方、一足先に春研の延期を乗り越えすっかり頼もしくなった74期、いつも笑って傍にいてくれた劇団のお友達。みんなみんな、本当にありがとうございました。みんながふと呟く「たのしい」という言葉にニヤニヤしたし、先輩方の「よかったね」というシンプルで暖かい言葉に精一杯のドヤ顔ができました。思うところは沢山あるのですが、わりと個人個人との関係になっちゃうのでいつかゆるく話したいです。



(2020年秋研『まちぼうけ』セットの中で)



(すごく長いですよね自覚してます、自セクションに触れろという主宰のお達しなので少しだけ続きます)


オンライン演劇で一番「なくても良い」セクションはきっと美術で、お金も時間も人も必要でリスクだらけ、自分の仕事はなくても良いのかと拗ねた時期もあります。でも、今は誇って良いんだと思えます。無くても良いのに求められるって、すごくかっこいいんです。

沢山の暖かい言葉をもらって、私は「私っぽい美術」をもう一度拾い集めることができました。意地とか虚勢じゃなくやっと素直に言えます。私は私のつくる美術が好きです。特に好きなところは、タタキ場がアイデアで飛び交うところです。脚演も補佐も人員も照明も小道具もやってみたいことを沢山言ってくれて試行錯誤して実現して、その分私の美術はすっごく面白くなったと思います。秋研を通して、自信が無いから周りを頼っていた自分から自信を持ってみんなのアイデアを受け止める自分に変わりました。

美術とぶたびにかけた3年間、演劇に育てられた9年間、楽しかった、悔しかった、寂しかった、全部まとめて大切にします。

引退したら同期ってだけじゃなくて、みんなとちゃんと普通に友達になりたいです。後輩ともっと気楽に話したいし、先輩に自慢したいことがいっぱいあるし、劇団のお友達の劇をお客さんとして楽しみたいです。今思いつくのはそれくらいかなぁ。先のことは、もっとのんびり考えます。

バカ長い上に恥ずかしい、えーいおわり!です!ありがとうございました!


P.S.この文章が公開されたら恥ずか死んで絶対引きこもりになるので積極的に構ってくれると嬉しいです。

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